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ファイトプラズマ(ふぁいとぷらずま)

ファイトプラズマの概要

ファイトプラズマ(ふぁいとぷらずま)とは、植物にさまざまな病害を引き起こす微生物で、以前はマイコプラズマ様微生物(MLO)と呼ばれていました。この微生物は細菌に近縁ですが、細胞壁を持たず、植物の師管(しかん)内に寄生する特性があります。ファイトプラズマはヨコバイやウンカといった昆虫によって媒介され、これらの媒介昆虫の体内でも増殖します。植物がファイトプラズマに感染すると、正常な成長が妨げられ、病気の症状が現れます。同意語としては「植物病原プラズマ」があります。

 

ファイトプラズマの詳細説明

ファイトプラズマは非常に小さく、通常の顕微鏡では観察できない微生物です。DNAを持ちますが、細胞壁がないため、形状が一定しないのが特徴です。この微生物は、植物の師管という組織内に侵入し、そこから栄養を奪いながら成長します。感染が広がると、植物の葉や茎に異常が生じ、最終的には全体の成長が阻害されることがあります。

 

ファイトプラズマの感染症状は多岐にわたり、作物によって異なります。代表的な症状としては、葉の黄変(おうへん)や縮れ、茎の異常な肥大やねじれ、さらには花や果実の形成異常などが挙げられます。例えば、イネ黄萎病ではイネの葉が黄色くなり、成長が遅れることが特徴です。また、シュンギク(春菊)てんぐ巣病(すびょう)では、茎が複数に分岐し、樹形が「てんぐ巣」状になることが知られています。

 

ファイトプラズマは、ヨコバイやウンカなどの昆虫によって媒介されます。これらの昆虫は植物の師管液を吸いながらファイトプラズマを取り込み、別の植物へと移動する際に感染を広げます。このため、発病の予防には媒介昆虫の管理が不可欠です。また、ファイトプラズマは昆虫の体内でも増殖するため、長期間にわたり感染源となる可能性があります。

 

ファイトプラズマの課題と対策

ファイトプラズマの課題と対策として以下の内容を取り上げます。

課題

  • 診断の難しさ: ファイトプラズマは非常に小さく、通常の診断方法では検出が困難です。そのため、感染の早期発見が難しく、被害が広がりやすいことが課題です。分子生物学的な技術を用いた診断が必要ですが、これには専門的な知識と設備が求められます。
  • 媒介昆虫の管理: ファイトプラズマの感染は媒介昆虫によって広がるため、これらの昆虫の管理が重要です。しかし、昆虫の大量発生を完全に抑えることは難しく、農薬の使用も環境への影響が懸念されるため、持続可能な防除法が求められます。
  • 耐性品種の欠如: 現在、ファイトプラズマに対する耐性を持つ作物品種は限られており、感染リスクを完全に排除することは困難です。そのため、感染後の対応や予防策に依存せざるを得ない状況が課題です。

対策

  • 分子診断技術の利用: ファイトプラズマの早期発見には、PCR(ピーシーアール)法などの分子診断技術が有効です。これにより、感染初期段階での診断が可能となり、被害を最小限に抑えることができます。
  • 生物的防除の推進: 天敵昆虫や病原菌を利用した生物的防除は、媒介昆虫の管理に有効です。環境への負担を軽減しつつ、ファイトプラズマの拡散を抑えることができます。
  • 輪作と作物管理の徹底: 輪作や適切な作物管理を行うことで、ファイトプラズマの発生リスクを減少させることが可能です。特に、媒介昆虫の活動が活発な時期を避ける作付けや、土壌改良を行うことで、感染リスクを低減できます。
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